水道用語一覧
レジオネラ菌レジオネラ菌（Legionella）は、グラム陰性の好気性桿菌であり水環境中に広く存在する病原菌です。特に温水環境を好み、冷却塔、温泉、給湯設備、水道管内で増殖することがあります。レジオネラ菌は、レジオネラ症（Legionellosis）と呼ばれる感染症を引き起こし特に肺炎（レジオネラ肺炎）を主症状とすることが多いです。
●レジオネラ菌の分類と特徴
・分類：レジオネラ菌は、約60種以上に分類され、その中でもLegionella pneumophila（レジオネラ・ニューモフィラ）が最も病原性が高くレジオネラ症の主な原因となります。
・特徴：レジオネラ菌は、多様な環境で生存可能ですが、特に温水環境（25～45℃）で最もよく繁殖します。pHは中性付近が適しており有機物が豊富な環境で増殖しやすいです。
●レジオネラ菌の感染経路
1. 吸入感染
レジオネラ菌は、エアロゾル（微細な水滴）を介して吸入されることで感染します。これが主な感染経路であり以下のような場所で発生しやすいです。
・冷却塔：冷却塔から放出されるエアロゾルが風に乗って広範囲に拡散し吸入されることで感染が拡大します。
・シャワーや蛇口：シャワーや蛇口からのエアロゾルが吸入されることで感染します。
・温泉やジャグジー：温泉やジャグジーのエアロゾルを吸入することで感染が発生します。
2. 飲用感染
レジオネラ菌に汚染された水を飲むことで直接感染することは稀ですが誤嚥（飲み込む際に気道に入る）することで肺炎を引き起こす可能性があります。
●レジオネラ症の症状
レジオネラ症には、軽症から重症まで幅広い症状があります。主な症状としては以下の通りです。
1. レジオネラ肺炎
・発熱：急激な高熱が特徴です。
・咳：乾いた咳が続き痰が出ることもあります。
・呼吸困難：重症の場合、呼吸困難や胸痛を伴うことがあります。
・倦怠感：全身の倦怠感や筋肉痛を感じることがあります。
・胃腸症状：吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れることもあります。
2. ポンティアック熱
・発熱：レジオネラ肺炎と同様に急激な高熱が特徴です。
・頭痛：強い頭痛を伴います。
・筋肉痛：全身の筋肉痛が現れます。
・倦怠感：重度の倦怠感を感じることがあります。
・回復：一般的には数日で回復しますが肺炎とは異なり肺の病変を伴わないため致命的ではありません。
●レジオネラ菌の検出と診断
1. 検体採取
レジオネラ菌の検出には、呼吸器分泌物、血液、尿などの検体が必要です。特に尿中抗原検査が迅速かつ有効な診断法として広く用いられています。
2. 検査方法
・培養法：呼吸器分泌物を培養しレジオネラ菌を分離・同定します。
・PCR法：遺伝子増幅法を用いてレジオネラ菌の遺伝子を検出します。
・尿中抗原検査：尿中のレジオネラ抗原を検出する迅速検査です。
●レジオネラ菌の予防と対策
1. 水系施設の管理
レジオネラ菌の発生を防ぐためには、以下のような管理が重要です。
・定期的な清掃と消毒：冷却塔、給湯設備、温泉などの水系施設を定期的に清掃・消毒することでレジオネラ菌の繁殖を防ぎます。
・水温管理：給湯設備の温度を60℃以上に維持し冷水は20℃以下に保つことでレジオネラ菌の増殖を抑制します。
・塩素消毒：水道水には適切な塩素濃度を保ちレジオネラ菌の繁殖を防ぎます。
2. 個人の予防対策
・シャワーヘッドの清掃：シャワーヘッドや蛇口の清掃を定期的に行いレジオネラ菌の繁殖を防ぎます。
・飲用水の管理：安全な飲用水を使用し特に高齢者や免疫力の低い人は注意が必要です。
●レジオネラ菌の対策技術
1. 紫外線殺菌
紫外線（UV）を利用してレジオネラ菌を含む微生物を殺菌する方法です。紫外線殺菌装置を水系施設に設置することで効果的にレジオネラ菌を抑制できます。
2. オゾン殺菌
オゾン（O3）を利用してレジオネラ菌を含む微生物を殺菌する方法です。オゾンは強力な酸化力を持ち水中の有機物を分解しレジオネラ菌の繁殖を防ぎます。
3. バイオフィルム除去
レジオネラ菌は、水系施設内のバイオフィルム（微生物が形成する粘膜状の膜）内で増殖することが多いです。バイオフィルムを定期的に除去することでレジオネラ菌の発生を抑制できます。
まとめ
レジオネラ菌は、水道関連施設において重大な健康リスクを引き起こす病原菌です。特に温水環境での繁殖が問題となり適切な管理と対策が求められます。定期的な清掃や消毒、水温管理、殺菌技術の導入などを徹底することで、レジオネラ菌の発生を防ぎ、安全な水環境を維持することが重要です。個人レベルでも予防対策を講じることでレジオネラ症のリスクを低減することができます。
